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「さゆり」

電子辞書を買いに行った。

さすがに「若干」は「わかせん」とは読まないが、英語だとそれ以下の最低レベルの間違いを平気でしてるなあと反省していたら、テレビでジャパネットたかたが「買いなさい買いなさい」と呪文のように連呼するし、さらに、『戯曲・法王庁の避妊法』の校正してる時、「これは一体、どの字を使うのが正しいんだぁ〜!!」と何百回も思い、「これは電子辞書がいる。今すぐ」と切実に思った。
私は、辞書は、本になってるものを手でめくって引くのが好きだ。
そうすると「溺死」のすぐ後の項目が「デキシーランドジャズ」だってことが判ったりして、楽しいからだ。
が、校正とかしてる時は、ものすごく辞書引くので、そんな余計なことに目を奪われてる場合じゃない。
まずとりあえずは新明解を引いてみて、ない場合は広辞苑や日本語大辞典に当たるのだが、広辞苑や日本語大辞典は、分厚い。なので、机の上がパソコンと校正ゲラでいっぱいになってる場合は、置く場所がないので、膝の上に置いて引くことになる。重い。重くて分厚い辞書を三冊当たることになるのもけっこう手間だ。
パソコンに入ってる辞書は、CDViewを立ち上げてからじゃないと出てこないし、広辞苑なのに案外「ないです」とか言いやがるので、めんどくさい。インターネット辞書もよく使うが、やはり項目がかなり少なくて、すぐに「これ以上知りたい奴は有料の辞書を利用しやがれ」と言い出すので、たどり着けなくて腹立つことが多い。
それに、校正してる時は、パソコンのキーボードがゲラの中に埋もれてどこにいったか判らないことがほとんどなので、キーボードを掘り出すところから始めなくてはならない。で、「やはりこれはもう電子辞書がいります」という結論に達した。

買いに行った。
が、どれを買っていいのやら、さっぱり判らない。
安いのは2000円くらいからある。高いのはワンセグでテレビが見られて、五万とか六万とかだ。
テレビは見なくていいので、即外れ。
が、2000円でいいのか?
確かに国語辞典と英和・和英が入ってるが、見出し数が少なすぎる感があり、ネットの辞書と同程度じゃないかと思われる。
とりあえず、ジャパネットたかたがおすすめしてるような19800円クラスのを見てみる。100コンテンツも入ってる。入りすぎ。家庭の医学とかは必要な場合もあるが、血液サラサラ辞典だかとか、糖尿病体操なんかはいらない。あと、ガーデニング辞典とか、秘湯の旅辞典とか、ためしてガッテン辞典もいらない。いるか? いるのか? もしかしているのか?
脚本書いてると、いつどんな資料がいるか判らないのは確かだが、でも電子辞書に、ためしてガッテン辞典は、いらないような気がする。だんだん判らなくなってきた。それより、温泉辞典が入った代わりに、必要な国語系辞典の見出し数が少ないのは、むしろ困る。本末転倒だ。

カタログ集めて、家に帰って検討した。
検討したらますます判らなくなった。
ネイティブ発音で「とっさの時の英会話」を喋ってくれるのもある。いるような気がする。とか思ってたら、スペインに行った時の方が困ったのを思い出し、英語と中国語と韓国語とフランス語とドイツ語とイタリア語とスペイン語の全部の「とっさ」を喋ってくれる奴が目に入り、それが必要な気がしてくる。
が、ちょっと待て。
私はまたスペインに行くのか? 行かない可能性が高い。フランスにも一生行かないかもしれない。でも、去年の11月みたいにいきなりインドネシアに行くことになる場合もある。インドネシア語の「とっさ」はさすがにないみたいだが。

仕方がないので「どうしても必要」という要望を絞って、再び店頭で店員さんに訊いてみることにした。
「すみません。国語と英和の見出しが充実してて、できるなら、古語辞典が入ってて、さらに言うなら、英和にスラング辞典が入ってて、欲を言うなら日本語アクセント辞典が入ってるのありませんか」
と伺ってみた。
「日本語アクセント辞典が入ってるのはありません」と言われた。
ないとは思った。が、けっこう必要だ。「この単語の正確なアクセントは?」と役者さんとかに訊かれる場合があるからだ。あらためて訊かれると不安になることがある。でも、電子辞書には入ってないか。だと思ったけど。
そしたら「お客様がご利用ですか?」と店員さんに訊かれた。
外国人の方が日本語を勉強するためにも電子辞書が欲しいけど、詳しいことを店員さんに訊く日本語力がないので、私に買うのを依頼した・・・と、店員さんは想定したようだ。
いえ、私ですが。
「英和のスラング辞典はありません。リーダーズとリーダーズプラス辞典に、比較的スラングが多いと思います。お客様の訳の判らないご要望に答えるとすると、これしかないです」と、一台に限定されてしまった。
2万円台までを考えてたが、ほぼ4万です。
マジですか? 温泉辞典もガッテン辞典もいらないと言ってるのに、100コンテンツの倍しますか。
目的をかなり絞り込んだつもりだが、4万ですか・・・
ものすごく悩んでしまった。
「でも、辞書一冊を本でご購入になった場合のお値段を考えるとそれでもお得だと思いますよ」と言われた。
確かに、日本語大辞典とか一万だかしたし、家庭の医学も7000円くらいした。一万円の辞書四冊買ったら、4万だよなあ・・・・
まあ言葉が商売道具なんだから、高くはないんだけど。
でも、悩むぞ。

結局はずしたが、医療用語とか法律用語とか金融用語とかも、いるっちゃいる。欲張ると、各業界の専門用語辞典が欲しい。
演劇業界用語辞典が欲しいと思う場合さえある。

今思い出したが、以前公演やった時、「さゆり」と呼ばれる小道具があった。
それは「骸骨」だった。
幽霊が出てくる芝居をやった時、骸骨が出た。
その骸骨を、舞台監督・村田師匠が「さゆり」と呼ぶようになった。
理由は「怖いので、名前をつけて親しみを持つ」ということだった。
なぜ「さゆり」という名がセレクトされたのかは、謎だ。
が、骸骨が、パネルの裏とかにいきなり置いてあって、引っ込んできた役者が、知ってはいてもちょっと怖い思いをしたりすると、村田師匠が、
「さゆり〜、なんでそんなところにいるんだよ〜、駄目じゃないか〜、さゆりはもう〜」とか、骸骨をなだめながら、別の場所に移動したりしていた。
そうこうするうちに、皆、「さゆり」と呼ぶようになった。
演出・鈴木が、「さゆりの位置が違う!!」とか、怒鳴ったりしてた。
すると、村田師匠が出てきて、「さゆり〜、違うってば〜、怒られちゃったじゃないか〜」とか言いながら、位置を直したりしてる。
確かになごむ。
が、劇場に入ってから助っ人に来てくれたスタッフは、いきなり「さゆり」って言われても「誰がさゆりなんだか何がさゆりなんだか」と戸惑ってた。「その現場用語辞典」が必要になることもある。

で、どの電子辞書を買うのだ、私。

この話よりももっとどーでもいいことを、「顔を洗って出直します」http://jitekin.way-nifty.com/に書いてます。どうにもこうにも暇だ、というような時にお越しください。

(2007年1月29日)

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