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「ダンスな空間」

「踊れる人っていうのは、舞台の上で支えていられる空間が大きいんだよね」
と、演出・鈴木裕美が、しみじみ言ったことがある。

鈴木が企画・演出した「Sweet On」というダンス公演を、一昔以上前に、自転車キンクリーツカンパニーでやった。
どうしても、ダンスだけの公演を、鈴木がやりたかったからだ。
ひたすら喋り倒すばかりの飯島の脚本に嫌気がさしたか、芝居の中にダンス・シーンを入れてみても、自転車キンクリートの女優たちがほとんどさっぱり踊れない状態なのに嫌気がさしたか、そんな理由もひょっとしたらあったのかもしれないが、最も大きな理由は、鈴木がダンスが好きだからだ。

「Sweet On」で、私は初めて、私がまったく関わっていない鈴木演出の舞台を観た。
勿論、台詞は全然ない。
俳優とダンスと音楽と照明があるだけだ。
観終わっての感想は、「なんか、アルバムを観てると思いました」だった。
アルバムって言っても、思い出の写真が貼ってあるアルバムじゃない。
ミュージシャンがCDとかにして出す、つまりあのアルバムだ。

まあ、実際ダンスが何曲も踊られる舞台だから、曲が集まってるっちゃ集まってる訳で、アルバムな感じなのは当然と言えば当然だ。
ひとつひとつのダンスを観てる時は、そこで踊られてたり、込められてたり、隠されてたりする、感情や物語を確かに感じることができて、で、次々と繰り広げられるダンスたちを観てると、テーマだとか大きなストーリーのうねりだとかが、自分の中でちょっとずつ組みあがってくる。
「これは、アルバムなんだな」というのが一番最初に浮かんだ感想だった。

いや、台詞がないってだけで、舞台なんだから、感情とかストーリーが判ってくるのは、当然ちゃ当然で、当たり前過ぎて言うまでもないことだ。が、私は、なにせ普段は字を一個ずつ書き続けて、それで言葉にして台詞にして、芝居を書いているもんだから、「Sweet On」を観てて、言葉なしに感情の塊がそのまんま心の中に飛び込んできて、それが入道雲みたいに膨らんでいく感じは、すっごく新鮮だった。

なんか馬鹿の感想になってしまうが、感情がスライムみたいな感じの塊と化して、私の中に飛び込んできて、でもって、いろんな色や大きさのスライムたちがどんどん増殖してって、最後には、合体したりして、すげえデカイ不思議な色のスライムになって、触ってみると、ぷにぷにしてて、スライムだもんだから、ちょっと形が変わったりもして、「あれ、なんか面白いものが私の中にできてるんですが・・・これは?」って感じだった。

・・・馬鹿の感想って、前もって言い訳したが、本当に馬鹿の感想である。
あまりにも、言葉が貧しすぎる。

「なるほど、こんなアルバムみたいな、スライムみたいな舞台は、絶対に私には作れない」
と思った。

ダンスでしか表現できない感情の形や、踊れる人でしかかもし出せない空気や、言葉がないからこそ、より切実で目に見える物語や気持ちの流れを、演出・鈴木は、どうしても作りたかったようだ。
そして、また作りたいとずっと思い続けている。

勿論、私にはそれは作れない。
作ろうと思いつきもしない。
だからこそ、是非とも、それをまた観たいと思っていた。

Oura Mizuki Dance Theater GIGEI TEN -伎藝天-「コインランドリー」の構成・演出を鈴木がやることになりました。
てか、やってます。稽古中です。
私は、まだまったく見てません。
鈴木が、選曲地獄で、曲が耳から溢れるどころか、曲が耳の穴に詰まって、耳フリーズ寸前の状態らしいとかいうことを、風の噂に聞いてるだけです。
噂を聞くだに大変そうだ。私は選曲地獄にだけは落ちたくない。
でも、面白いです。
言い切れます。
是非、劇場にいらしてください。
ダンスがお好きな方は勿論のこと、ダンス公演を観たことないという方にも、ご覧頂きたいです。言葉が貧しくて、ほんと的確に伝えられませんが、きっと新しいことが見られるし感じられると思います。

★いつも、ほんとどーでもいーことばかり書いている飯島のブログ「顔を洗って出直します」ですが、この先Oura Mizuki Dance Theater GIGEI TEN -伎藝天-「コインランドリー」についても書いたりするかもしれません。お暇でしたら、覗いてみて下さい。

(2007年3月7日)

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